寺院では12月31日の夜12時を期して108つの鐘をつく。この鐘の音を聞き終わると煩悩が祓われ、めでたい新年が始まる。
- 食欲・財産欲・性欲・嫉妬などの執着を一つ一つ取り除く
大晦日の夜12時になると、全国各地で寺で除夜の鐘をつき始める。108つの鐘は、仏教思想で人間のもつ108つの煩悩を意味する。除夜の鐘をつくことで食欲・性欲・財産欲・嫉妬などの執着を一つ一つ取り除き、煩悩から脱却することを願った。あるいは一年を区分する12ヶ月間と24節気・72候を合わせた108回の意味で、一年の罪業を振り返らせ、反省を促すのだという説もある。
いずれにしても除夜の鐘を聞くことはとても縁起のよいこと。日本中がこの鐘の音を聞きながら、すがすがしく新年を迎える。そして108つの鐘をつきおわると正月となり「あけましておめでとう」と新年の挨拶を交わす。
- 心清らかにお経を唱えながら
108つの鐘の風習は、唐の禅僧・百丈懐海が制定したといわれ、奈良時代に日本にも伝わった。大晦日に限らず毎朝夕つくのが原則で、今も寺院では暁に眠りを戒め、夕には迷いを冷ますため略式で18回の鐘をつく。この仏教的な儀式が、旧年中の穢れや厄を祓うという日本古来の「晦日の祓い」と結びついて除夜の鐘の風習になったといわれている。本来は107回は旧年中につき、108回目は新年につく。しかし現在では夜12時から1つ目をつき始めるのが慣習となっている。
近年は参詣する人に除夜の鐘をつかせてくれる寺もある。鐘をつく場合には、できれば『般若心経』『観音経』などのお経を唱えながら「煩悩解脱・罪業消滅」をお願い、心清らかに鐘の音を鳴らしたい。滋賀県大津市の三井寺・京都の知恩院・東京の浅草寺などの除夜の鐘はとくに有名で、訪れる人も多い。
出典:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」