若水

年の始めの井戸水は、若さを与え、邪気を祓う。元旦の朝は早起きをして、心新たに水を汲もう。水道水でも効果は望める。

  • 女性は、この水で顔を洗うと若さを得、美人になる

若水は初水・福水・宝水ともいって、元旦の朝一番に汲む井戸水のこと。邪気を祓う力があり、とりわけ女性がこの水を飲み、顔を洗うと若さを得、美人になるといわれている。というのも、その起源が古代の変若水信仰にあるからで、変若水とは天照大神の次に生まれた月の神、月読命が持っていた若返りの水だった。かつて宮中ではこの水を得るために、わざわざ天皇の吉方にある井戸を封じておき、立春の朝初めてそれを汲んだという。

  • 早朝、人に会わないうちに汲むのが吉

若水を汲むのは夜も明けやらぬ早朝、人に会わないうちが吉。もしかりに出会っても、口をきいたりしてはいけない。まずはその年の恵方に向かって拝み、注連縄のついた井戸から、輪飾りを飾った新調の手桶に水を汲む。これを「若水迎え」という。地方によって文句は違うが、このとき「福汲む、徳汲む、幸い汲む」などの縁起のいい言葉を唱えるのがしきたり。この若水は神棚に供えた後、口をすすいだり、正月料理に使う水にしたりと、家族のための用水になる。

  • 水道の蛇口からでも若水は汲める

水道の普及とともに次第に廃れていった行事だが、水がたいせつなものであることは今も同じ。蛇口に輪飾りをつけ、水への感謝の気持ちを込めて汲む。心を改めれば、たとえ水道水でも、新年とともに縁起のいい水になる。

この若水で福茶を入れてみよう。正月最初に飲むお茶を福茶、または大福茶といい、ふつう小梅と結び昆布を入れた湯呑みに、若水を沸かした湯を注ぐ。これをお屠蘇の後かお雑煮の前に飲む。昆布も梅干しもビタミン・ミネラルが豊富。正月の酒や肴で片寄がちの栄養を補うには最適だ。と同時に神様から若さみなぎる生命力を頂戴しよう。

出典:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」