忘年会

親戚や友人などが集まり、無病を祝し一年間の苦労を忘れて年の暮れに催す宴会が「年忘れ」。職場などの集団で酒を飲む忘年会は年忘れの新しい形だ。

  • 御先祖とともに飲むことで御加護を得る

もともと年の暮れにその年の労を忘れ、無病息災を祝し合う宴会を「年忘れ」といった。古代中国では「年忘れ」は「別歳」「文歳」ともいわれ、先祖を祀った後のお供えものを食べる直会の一つとして行われたようだ。直会は神に捧げた供物を下げ食することで、会食者は神の祝福を受け、魂を共有する儀式だ。

年忘れの場合も同様で、宴会を行うことによって、御先祖様のご加護が得られると考えれれてきた。平安時代の和歌に、除夜は「亡き人の魂が来る魂祭の夜」であることを詠んだ例もみられるなど、日本でも古来、除夜に先祖を祀る「魂祭」の風習があった。

「年忘れ」の語は室町時代からみられ、年末行事として除夜に連歌の宴(和歌を読み合う会)を催す武将などもいた。しかし、天皇の側近の女官が書き継いだ『御湯殿上日記』の江戸時代の記述の12月9日に「大御ちの人より御年忘にて共御参る」という一節がある。この例からみても、年忘れは必ずしも暮れの押し迫った時期に行う行事ではなかったことがわかる。

  • 盛大に催したほうが縁起がいい

現在では、職場や友人同士で催す年末の酒宴を忘年会とよんでいる。仕事納めを兼ねたり、酒を飲んで愚痴を言い合い、一年の憂さを晴らすことも多いようだが、本来は親しい者同士が同じテーブルを囲み、一年の無事を祝い合うもの。それが「旧年中の厄を落とす」ことにもつながるのである。

だから忘年会はできるかぎり盛大に催したほうが縁起がいい。皆で美味しいご馳走を食べ、お酒を酌み交わして、一年間の厄を吹き飛ばせば、新しい年には必ずや運が開けるというものだ。

出典:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」