書き初め

書き初めは、その年初めて書画を書くこと。正月二日は事始めの日で、縁起のいいこの日に縁起のいい詞を書いて、筆の上達を祈願した。

  • なにごとも縁起のいい日に始めると必ず続く

書き初めは、新年になって初めて書や画を書くことで、正月二日に行われる。正月二日は、仕事の準備をしたり、稽古を始める儀式の日。元日にもまして重要な日なのだ。なにごとも縁起のいい日に始めると必ず続くといわれていることから、初荷・仕事始め・鍬始め・舞い始め・謡い始め・初釜……と、書に限らず、事はこの日に始められる。

書はその人物を語るとさえいわれ、今では想像もつかないほど重要だったことから、書き初めはとても大切な儀式だった。庶民の間に浸透したのは江戸時代、寺子屋教育が始まってからだが、平安時代すでに宮中には吉書初めの行事があった。

  • 若水ですった墨でおめでたい詞を書く

書き初め用の筆と墨は常に新しいものを用意する。部屋には学問の神様、菅原道真公の画像を掛け、その年の恵方に向かって若水で墨をすり、筆を取って、おめでたい詩歌やし詞、自作の賀頌をしたためる。和歌では「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」、漢詩では「長生殿裏春秋富 不老門前日月遅」が江戸時代よりの定番。ともに『和漢朗詠集』の「祝」の部分に載っている。

吉書は神棚に上げておくか、部屋に飾り、正月十五日のどんど焼きの火で焼く。これを吉書揚げといって、紙が高く燃え上がれば上がるほど、腕前は上達するといわれている。

正月二日は仕立屋さんも、縫い始めの日として、布に一針だけでも針を通す。すると一年中仕事に困らないとか。作家を志すなら一文なりとも書いてみよう。ピアノが上手になりたいのなら一曲なりとも弾いてみよう。仕事も芸術もスポーツも、なにごとも初めが肝心。正月二日、襟を正し、さわりだけでもやってみるといいかもしれない。

参:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」