お彼岸

先祖を敬う心が幸福を呼ぶ。春分・秋分の両日、太陽は真西に沈み、西方十万億土の彼岸まで一直線。御先祖様にもっとも近づくことのできるチャンスだ。

彼岸は春秋、一年に二回ある。それぞれ春分の日と秋分の日を中日として前後三日、都合七日間をいう。春は三月十八日ごろ、秋は九月二十日ごろが彼岸の入りだ。彼岸といえば墓参り。寺では彼岸会が営まれる。でもなぜお彼岸に、仏事が行われるのだろう。

  • 真西に沈む太陽が極楽浄土のありかを示す

彼岸は梵語の「波羅密多」を訳した語で、迷いと煩悩に満ちた此の岸から、阿弥陀如来のおはす彼岸、西方浄土に渡るとの意味がある。春分・秋分の両日なら太陽は真西に沈むから、先祖の霊に的確に浄土が示せ、往生の本願を遂げさせることができる。また、昼と夜の長さが同じということは、仏教で尊ぶ中道にも通じる。「浄土三味経」には「八王日には善行すべし」とあり、彼岸は八王日の一つ。先祖の霊は彼岸にこそ祀らなければいけないわけだ。

西方十万億土まで一直線。お彼岸は御先祖様に最も近づくことができる機会だ。故人をしのびたいせつに供養する心はきっと通じる。今日あることの感謝なくして開運はありえないのだ。

  • 彼岸の入りには家の仏壇もきれいにし、菊や故人が好んだ花を飾る

墓参りはお彼岸中だったらいつでもいい。持参するのは花、束のままの線香、ローソク、数珠、マッチ、タワシ、あればお供えの品など。水桶、柄杓、掃除用の竹箒などはおそらく寺にある。

中日にはおはぎを供えるが、故人の好物を用意するのもいい。灯明や線香は、できれば彼岸のあいだ灯しておく。

彼岸の中日に夕日を拝むと極楽往生できるとの言い伝えがある。

大阪の四天王寺の西門は極楽の東門に通じるとされ、ここからの夕日を拝みに人々が殺到する。

出典:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」