鏡開き

鏡餅には歳神様が宿っている。槌で開いた鏡餅をぜんざいにしたりするのは神様の魂をいただくため。鏡開きをしなければ新年の運は開けないのだ。

  • 鏡餅は「切る」「割る」ではなく槌で「開く」

地方によって三日、四日、二十日のところもあるが、正月十一日は、神様に供えた鏡餅を割って食べる、鏡開きの日とされている。せっかく神様が宿った鏡餅も、実際に頂戴しなければ魂は得られないし、いつまでも飾っておくいのは縁起が悪い。この日からは正月気分も一掃し、仕事に勉強に、各自日常生活に戻るとされるから、そのためにも、身体の中にしっかりと歳神様の魂と祝福を受け、無病息災で一年を過ごさせていただこう、というわけだ。

鏡餅は「切る」「割る」といわず「開く」という。新たに幸せな年を開くという縁起にかけたものだが、「切る」も、そのための刃物も、切腹を連想して縁起が悪いからともいわれる。もとは武家の具足開きから起こった風習で、一月二十日、鎧兜の前に供えた鏡餅を開いて食べると、勇気のある侍になれるとされていた。ところが慶安四(一六五一)年四月二十日に家光が没し、二十日が家光の忌日になったため、商家の儀式であった十一日の蔵開きの日に繰り上げられた。商家ではこの日、蔵に供えた餅を開き、商売繁盛を祈っていただいていたという。

  • 神様の魂をありがたく全部頂戴する

鏡餅を下げ、埃をよく拭き取ったら、手や槌で割って開く。鏡開きには包丁は禁物。最近は真空パックされた鏡餅があるが、刃物を使わなければ開けないから縁起上は好ましくない。表面にかびが生えていたらアルコールで拭き取るか、金たわしでこすり取るとよい。

鏡開きに餅を皆で分け合って食べることは等しく同じ魂を持ち、主従関係を円滑にするというのが武士の時代からの言い伝え。ぜひ家族揃っていただきたい。残ったり細かく砕けたものも捨ててはいけない。裏白や半紙などの飾り物は門松と一緒にしまっておき、小正月に左義長の火で燃やす。

出典:講談社 武光誠編著「開運の手引き 日本のしきたり」